寒さの中にも春の訪れを感じる今日の良き日に、ご来賓、保護者のご臨席を賜り、卒業証書授与式を挙行できますことに心より感謝申し上げます。
五十八期生の皆さん。卒業おめでとう。この卒業証書は、「進取 明朗 端正」の校訓のもと、君たち一人一人が、努力を重ね、様々な経験をとおして大きな成長を遂げた証です。思い起こせば、君たちが入学してきたのは、新型コロナウィルスとの戦いのさなかでした。それから約二年間、感染拡大の波が何度も押し寄せ、教育現場も様々な制約を受けました。状況を見極め、君たちが少しでも充実した学校生活が送れるよう、先生方をはじめ多くの方々が知恵を出しあいました。君たちの健康管理や感染症対策等、ご家族にも大変な御苦労があったと思います。困難に立ち向かう強さや忍耐力、人々の絆が、以前にもまして必要でした。卒業アルバムには、その頃の写真がたくさん掲載されています。太宰府への遠足や、クラスマッチ、修学旅行など、マスク越しではありますが、君たちの笑顔をたくさん見ることができます。自分が変えることのできない不条理な現実に直面しながらも、嘆くばかりではなく、工夫し、助け合い、乗り越えてきたことが伝わってきます。
君たちが三年生となった四月からは、まさに全校生徒が躍動した一年でした。
城南祭は、初日の校内での公開、二日目の一般公開という今までにない規模で実施しました。そのテーマには、新しく伸びた枝のように、新たな物語を始めよう、個性溢れる新しい花を咲かせようとの気持ちが込められていました。体育大会のテーマには、六十回という節目を迎え、新たな城南の始まりにという思いと、関わるすべての人々にとって、様々な思い出やたくさんの笑顔、友情が乱れ咲くものになるように、との思いが込められていました。創立六十周年のテーマは、城南の新たな夜明け、新たな可能性を求めて、でした。これらのテーマは、すべて、生徒が考えたものです。共通するのは、苦難を克服し、その経験を糧として、新たな歴史を刻もうとする強い意欲です。創立六十周年を飾るにふさわしい輝かしい一年でした。私が感動したのは、君たちの志や努力、団結力、そして作り上げたものの素晴らしさもさることながら、折々で伝えられる感謝の言葉です。開催できたことへの感謝。力を尽くしてくれた方々への感謝、支えてくれた仲間や家族への感謝。たくさんの感謝の気持ちが幾度となく語られました。「感謝は最高の美徳であり、他のすべての美徳の源である。」私の好きな言葉です。自発的に様々なことに「ありがとう」と言えることは、人間としての大きな成長です。戦争がないこと、いつも通りの日常が送れること、やりたいことや夢にチャレンジできること、友人や家族と一緒に過ごせること、そういう当たり前と思われていることに、幸せを感じ、感謝し、大切にできる君たちが、これからの日本を支え、発展させることができるのだと思います。
今、社会は急激に変化しています。生成ＡＩ、ビッグデータ、ｉＯＴなど、新しい技術の活用と、それに伴う社会の変化は目覚ましいものがあります。予測が難しいこれからの社会では、時代に適応した能力やスキルを身に付けることが必要です。「進取」の気性を持って、生涯をとおして学び続け、光り輝く未来を築いてください。そして、どんなに社会が変容しようとも、人と人との直接的な関わりや結びつきの大切さは変わることはありません。明るく朗らかで端正であることは、これから君たちが、新しい環境で多種多様な人々と接する時に、大きな助けになることでしょう。
保護者の皆様。お子様のご卒業、おめでとうございます。心身ともに大きく成長し、高校卒業という節目を迎えられたことを誇らしく思われていることと思います。感染症対策という常にない御苦労がある中、ご家族で支えあいながら、今日の日を迎えられたことを、心からお喜び申し上げます。この三年間、本校の教育活動にご理解とご協力をいただきありがとうございました。また、部活動、学校行事等様々な場面で、お子様のみならず、城南高校の生徒に熱い声援を送っていただいたことに重ねて感謝申し上げます。お子様の卒業後も本校を応援していただければ幸いです。ご来賓の皆様。お会いする機会が少ない中でも、変わらぬご厚誼をいただき、ありがとうございます。これからも同窓の皆様、地域の皆様、そして本校に関わりのある多くの皆様に愛され応援される学校づくりに努めてまいります。これからもご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします最後に、五十八期生の皆さん。城南高校の卒業生であるという誇りを胸に、新しい世界へと踏み出してください。城南高校を盛り上げ、伝統をつなぎ、新たな歴史の一ページを開いてくれたことに、心から感謝します。君たちの人生が、幸せと喜びにあふれたものになるよう、エールを送り、式辞といたします。
令和六年三月一日
福岡県立城南高等学校 校長 太田 亨