福岡県立城南高等学校

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令和2年度  福岡県立城南高等学校  第55回卒業証書授与式


第55期生 学年団(正・副担任教職員)

  




校 長 式 辞






 

 雲の隙間から差し込む 穏やかな春の光が、冬の陰を明るく照らし出し、柔らかな風の音と、[重なり響く]小鳥の囀りが 新しい季節を告げようとする 今日の佳き日、福岡県立 城南高等学校 卒業証書授与式を挙行するにあたり、ご家族のご列席のもと、福岡県教育委員会をはじめ、ご来賓の方々のご臨席を賜り、立派に成長した若者たちの旅立ちを、共に祝福できますことは、卒業生はもとより、本校教職員一同にとりまして、誠に喜ばしく、心から感謝申し上げます。

ただ今、卒業証書を授与されました 三百八十七名の生徒諸君、卒業おめでとう。自らの強い意志で 城南高校の門をくぐり、巡り会えた誠実な友たちと、共に過ごした高校生活。「未来を切り拓く力」とは何か、「ドリカムマインドを持つ」とはどういう意味か。様々な観点から、将来の自己実現のあり方を問われ続けて過ごした 濃密で特別な時間。その一方で、友と他愛のない会話を交わした ゆったりとした [ありふれたあの日々]。その記憶一つ一つが、今 吹奏楽部の [奏でる音が連れてきた][心地良く] [懐かし]い 思い出として [幾つも溢れ]出していることでしょう。

指折り数えて待ち続けた今日のこの日。指折り数えて、話をつなげて行きます。

まずは一。本日は一日。一堂がここに会し、卒業証書授与の一瞬を待つ。その一瞬が 一生の思い出となる一日。

次に二。一日は 昼と夜の二つからなる。昼は光、夜は陰、合わせて「光陰」。「光陰矢の如し」とは、時の流れの速さを語った言葉。時の流れは一定のはずなのに、こうも短く感じられるのは、大人の私たちの感覚が鈍ったせいか。光り輝く青春を謳歌してきた若者たちにとっては、相対性理論が示すがごとく、充実した時間が ゆっくりと過ぎていたのではなかろうか。

続いて三。高校で過ごしてきた年月は三年間。一年の三つの学期を三度繰り返す。繰り返してはきたが、同じ場所ではなく、自分の立ち位置が、上昇していたことに気付いていただろうか。学年という階段は一巡りするたびに上昇する「螺旋」であり、若者は日々成長を続けながら、三年生三学期三月の今日のこの日に、最上段にたどり着いた。

そして四。人生は四季に例えられる。季節には色がある。青春、朱夏、白秋、玄冬。学問を志し 活力と希望に満ちた 青い春、人生の働き盛り・燃える朱色の夏、静かな落ち着いた日々・積み上げた経験を次世代へと伝える 白い秋、人生の夕暮れ時・道を究めた 玄い冬。福岡県出身の主人公が活躍する小説「青春の門」。それに呼応するかのように同じ作家が晩年に書いた「玄冬の門」。その中で、人生の四季を絵に例えている。「青春は クレヨン画、朱夏が 油絵、白秋は 水彩画。そして玄冬は 水墨画」。

最後に五。水墨画を描くのは墨。「墨に五彩あり」と言う。五彩とは五つの彩りのこと。焦墨、濃墨、中墨、淡墨、清墨の五つのモノトーンで光と陰の世界を描き出す。

さて、その水墨画に 「虎図」・「龍図」という襖絵があります。奇抜な発想と大胆な構図で知られる 江戸時代の絵師、長沢芦雪によるものです。和歌山県南端無量寺という寺にある この襖絵は、それぞれ襖六枚からなる大作です。襖六枚のうち三枚にわたって描かれた 世界最大と言われる 巨大な「虎」、見る人をにらみつける迫力、獲物を狙って今にも飛び出してきそうな躍動感。その虎の目線の先に 向かい合うように位置する「龍」。襖四枚にわたる雄大な「龍」の姿は、「虎」の存在を意に介さず、悠々と空を舞っているかのよう。「虎」の圧倒的な迫力と「龍」の悠然とした姿の対比に、戦いを予感させる 張り詰めた緊迫感が 場の空気を制します。

ところで、襖絵には 他の絵画と大きく異なる点があります。裏側にも絵がある ということです。「虎図」の裏絵にあるのは、水に泳ぐ「魚」を狙う「猫」。さりげない日常の風景の一部としてそこにあります。なぜ、ここに「猫」がいるのか。「猫」の構えをよく観察すると 分かります。左前足を前に出し、尻尾の先をくるりと巻いて、水の中の「魚」を睨んでいます。一方、「魚」は「猫」が嫌う水の中にあり、我関せずと 悠々と泳いでいます。そう、表の「虎と龍」の構図と一致しています。表の「虎」は「魚」の目から見た「猫」であり、「龍」は「猫」の目から見た「魚」であったということです。表は、相手を正面から見る視点、裏は、一歩離れて横から見る視点 で描かれています。この視点の転換は、物の見方における 重要な真理を含んでいます。

ドイツの哲学者ヘーゲルが著書「精神現象学」の中で、精神の成長を 三段階で表現しています。第一段階は、目の前に立ちはだかる 壁がある状態。高さも幅も分からず、壁しか見えないので、到底、超えられそうな気がしません。物事を「主観」で見る世界です。第二段階は、その壁と対峙している自分を 横から眺めている状態。壁がどれくらいの高さで、厚みがどれだけあるのか、自分と壁との関係性が見えています。自分の視点から離れて、物事を「客観」で見る世界です。襖絵に当てはめてみれば、恐ろしい「虎」の姿しか見えていないのが、「主観」で物事を見ている 第一段階であり、「猫」と「魚」の関係性を見ているのが、「客観」で物事を見ている第二段階です。

これから社会に旅立つ 皆さんの前には、幾つも 人生の壁が立ちはだかることでしょう。その壁を前に、超えるのは無理だ と簡単に諦めるのではなく、視点を変え、冷静に自分と壁の位置関係を見つめ直してください。そうすれば、どうすべきか が見えてくるはずです。どんな人生の壁も「虎だ」と思わず、「猫だ」と思えば、恐るるに足らず です。

そして、ヘーゲルの精神の成長の 最終段階は「達観」。「達観」とは、広い視野で物事を見ること。襖絵の「猫」と「魚」の周りには、左に「鶏」二羽、中央に「薔薇」、右に水辺に遊ぶ別の「猫」二匹。描かれているのは、表の戦場とは反対の、実は貴重な日常の平和なのです。

ここで、一首。

「虎と龍 目線で戦う春の空 (裏)返して見れば 麒麟がくる国」

遅くなりましたが、改めまして、保護者の皆様に、心からお祝い申し上げます。眩しい程に成長し、本日、晴れの卒業式を迎えた お子様の姿を目にして、感無量のことと存じます。

早朝から学校に送り出し、我が子の充実した高校生活と 成長を願い、何よりも 元気に帰宅する姿を祈る日々。時には人間関係に悩み、心折れることがあったかもしれません。時には進路で親と意見が対立し、相手が[何を願う]のか、[何を祈る]のか 互いの思いが伝わらないことに、[いつの間にか流れた涙]を、拭ったことがあったかもしれません。そんな多感な生徒たちを、いつも励まし、支えていただいた三年間も [今日でさよなら] です。保護者の皆様の その深い愛情に対しまして、心から敬意を表しますとともに、三年間の長きにわたり、本校の教育活動に、ご支援・ご協力を賜りましたことに、深く感謝を申し上げます。そして、三年前お預かりしました大切なお子様を、本校の教育を信じていただいた 感謝の気持ちを添えて、本日ここにお返しいたします。

最後に、特に困難であったこの一年間を振り返り、「光と陰」というテーマでメッセージを贈り、この式辞を 締めくくらせていただきたいと思います。

 

この一年ほど、光と陰を意識する時はなかった。光は照らすもの。明るく、温かく私たちを包み込むもの。光の中で、人々は安心して集い、触れ合い、語り合う。

陰は光が届かぬところ。暗く、冷たく私たちを閉じ込める。陰の [淀んだ空気の中で]は、人々は引き離され、孤立し、黙らされる。光に慣れていた私たちは、[薄暗闇に包まれた 見覚えのない場所]に 恐怖を抱き、身近な人にさえ攻撃的になる。暗黒、ブラックは見えないもの、見えないから理解できない、理解できないから得体が知れない。だから恐れる。だから嫌う。

光に照らされた世界は、私たちが、何の心配もなく、当たり前に、皆で食事に出かけ、演奏会を楽しみ、気軽に旅行に出かけていた過去。陰の世界では、感染に怯え、外食、旅行、[YOASOBI]はおろか、外出さえも妨げられた。そんな[営みの消えた街の中]、感染防止のため 職を失う人がいる一方で、感染対策のため増え続ける仕事に気力を失う人たちもいる。そんなやり場のない怒りや 嫌悪に満ちた現在。

そして未来、もはや、楽しかった過去の世界の[アンコール]は 望めない。では、私たちは何をすべきか。光と陰の関係を当てはめてみる。それは、見えない陰に光を当てること。明るくなれば、恐怖が消える。照らしてみれば、正体が見える。光があれば、希望が持てる。

光を当てるとは 知ること。思い込みや偏見ではなく、科学の目で、公平の耳で、嘘のない誠実の心で、知覚し理解すること。しかし、この陰の中、知ろうとすること、そして理解したことを正直に口にすることにも、相当な勇気がいることに、私たちは気付いた。

どんなに怖くても 私たちは誠実の勇気を持たねばならない。なぜなら、誠実を失うことは、多くの命を失うことにつながるのだから。

さあ、城南生よ。希望の光を持って、世界を照らし出せ。どんな困難にも負けない誠実の勇気を持って、未来を切り拓け。

 

春の光の中、将来、世界で逞しく活躍する 君たちの勇姿を想い描きながら 式辞とする。

 

 

令和三年 三月 一日

福岡県立城南高等学校

 校長  坂本 友司

  

[引用]Ayase(YOASOBI) 『アンコール(THE BOOK)』ソニー・ミュージックエンターテインメント 2021年

 

 卒業証書授与 

在校生代表送辞





 







卒業生代表答辞

校歌斉唱 







 


  

 

各クラス最後のホームルームの様子

 
 

 


 


 


 

 

   

   

   

   


























































 

 

 

 



 


 


 


 

 


 


 

 

 


 

     
     


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