4月に入り温かい日々が続く中、本日令和4年度第1学期初日を迎えました。皆さんはどのような気持ちで今朝を迎えましたか。何か目標を立てて迎えることができていますか。私も密かに今年の目標を2つ設定しています。1年後自分はどうなっていたいのか、その具体的な姿を想像して目標を立て、メリハリのついた生活を送ってくれることを期待しています。
さて、4月1日に、約140年ぶりの民法改正が行われ、成年年齢の18歳引下げという皆さんに直接関係する大きな変化がありました。3年生の中にはすでに成年になった人もいるかもしれません。法律上許されることが増えたと同時に、青少年保護の観点から、引き続き認められていないものもあります。また、成人とはいえ高校生ですから、保護者の了解がなければ学校として許可できないこともあります。制度導入の初年度でもありますので、生徒全員が在学中に成人になることの意義を正しく学んでほしいと思います。
この成年になるということは、極めて当然ですが、自分で決定できる事項が増えると同時に、その決定にこれまで以上の責任が生じるということでもあります。責任を果たすことのできる人間とは、社会的に自立できる人間であることが前提です。このことを踏まえ、今日は「自立」とは何かということを少しお話して、式辞に変えたいと思います。
皆さんは「自立とは何か」と尋ねられたらどう答えますか。授業でも学んだかもしれませんが、辞典には「他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに存在すること」と書いてあります。ですから「人に頼らず生きていくこと」や「自分でお金を稼いで生きていくこと」という答えが返ってきても不思議ではないのですが、これは一面的な考えかたにすぎません。
自立には経済的自立、社会的自立、精神的自立という側面があり、経済的自立とは「自分で収入を得て生活できるようになること」です。社会的自立とは「社会の中で他者との人間関係を構築しながら社会の一員として生活すること」です。そして精神的自立とは「自分の言動に責任がとれ、自分の人生に起こった問題を真摯に受けとめ、他者と協働しながら目的を達成できること」です。つまり、先ほど触れた「社会における自立」とは「誰にも頼らず一人で生きていくこと」ではなく「他者と共に生きること」に他ならないのです。この「自立」に関する考え方は、教育ジャーナリストでもある品川裕香先生が『働くために必要なこと』という著書の中で書いているのですが、自立した社会人になるためには、社会に出る前に最低限の準備をしておく必要があって、それは「人と繋がる力を養うこと」と述べておられます。
城南高校は、他の人と協働しながら課題を解決する力を身につける、SSHやESD探究などのプログラムが充実しており、授業でも人と関わりながら学ぶ場面が多く設定されているので「人と繋がる力を養うこと」ができる環境が整った学校だと思います。また、他の人とコミュニケーションをはかりながら合意形成を目的とする部活動や学校行事も充実しています。
このような、自分とは異なる興味・関心を持つ人と共に学校生活を送ることを通して獲得した「人と繋がる力」こそが、現代社会を生き抜くために必要な「多様性」や「共生」という考え方の理解にもつながるものと確信しています。お互いを認め「助け合い・支え合い・補い合い」ながら、新しいクラス・新しい学年での生活をスタートしてください。
今年一年が、皆さん一人一人にとって、責任ある言動や行動ができる人間に成長し、かけがえのない一年になることを期待して、第一学期の式辞とします。