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 中学生・高校生へのメッセージ

   本校では、グローバル社会に対応した人材を育成するために、CCSプログラムを実施しています。そのプログラムの一つとして、未来に生きる城南生や日本の中学生・高校生へ、世界の各分野で活躍されている方から示唆に富んだメッセージをいただきました。

「グローバルな活躍に向けて」

スタンフォード大学教授 西 義雄 氏  


 高校生にお話しするのは、自分の高校時代以来初めてですので、皆さんにお会いするのを楽しみにしていました。スタンフォード大学のあるシリコンバレーは、大学や企業、政府の多くの機関が集まっています。また、アメリカで博士の人口密度がもっとも高い地域です。いろんな国の人が集まっています。それでそれぞれ考え方も違う。アメリカで感じたのは、日本だと以心伝心のように言わなくても分かり合えるところがあります。アメリカは違う文化の集まりだから、何をするにも自分で言葉に出して言わないと物事が進まないのです。アメリカではコミュニケーションが大事です。何も発言しなければ何もできない。人にしてほしいことは自分で発言しないといけない。国も考え方も違うから、いろんな見え方から、新しいアイデアが生み出される。それで、そのアイデアを実行して失敗しても認められる。つまり失敗は努力した証しであると考えられるのです。ゲーテの「ファウスト」の中に「人間は努力する限り迷うものである。」との言葉があります。失敗は努力した証拠なのです。シリコンバレーのもう一つのカルチャー・文化は、アメリカ人は個人主義だと言われるが、何かをしようとすれば、人のつながりを大事にしていることです。一人では何にもできない。「Me too」(私も)ではなく、彼はこう考えるが、私はこう考えるといったように、迎合なしに自分の考えを言い合う。大学や企業がそれぞれの立場で自分の考えを言い合う。そこに新しいアイデアが生まれる。オープンなコミュニケーションができることが大事なのです。お互いに信頼した上で仕事をするのです。言っていることと考えていることが違うと、疑心暗鬼で内向きになる。相互信頼で仕事をすることが研究やビジネスで大事なのです。
   次にシリコンバレーでは、ジェントルマンシップが大事にされます。ある人を採用するときに、どんな人かその人の能力を調べるが、最後はジェントルマシップがあるかで決まる。つまり、一番大事なことは、身だしなみとかでなく、絶対に人を裏切らない人かどうかである。自分の高い人格をもって、それに照らして行動し、人を裏切らない。それが大事です。皆さんは、大学に入って何をするか、会社に入って何をするか考えていると思いますが。私は高校時代、いつの間にか無意識に、半分は意識的に何が一番やりたいかを考えていました。それに没頭することが一番大事です。人間の能力は、1日24時間考えられることを見つける時に、100%の能力が150%になるのです。私が親しくしているノーベル物理学賞を受賞した博士も同じことを言っていました。彼は、若い人からのこれからどう生きたらよいかとの問いに、「一番熱中すること、一番やりたいことを一生懸命やりなさい。」と言っています。何年か頑張ってやっていると、こうあればいいという自分になっている自分を発見するでしょう。これは楽しいやり方で自分の能力を活かすやり方です。
   次に大事なことは、何事も鵜呑みにしないことです。「まてよ、そうかな。」と疑問を持つことです。教科書に本に書いてあるからといって鵜呑みにしない。新しい発見がされて教科書に載っている学説が間違っていることもある。自分の殻を破ることで、こうあったらいいなという自分を目指すのです。過去、スタンフォード大学の留学生は日本がトップ10に入っていました。今は50番目ぐらいです。日本が元気だったころは多くの日本人が留学していました。私の研究所も多くの留学生がいますが、日本人は私一人です。留学生が減っている。これは、ハーバード大やMITも同じようなことだと思います。これはゆゆしきことです。皆さんも、今のままで満足せず、失敗を恐れずやりたいことに挑戦することです。失敗の経験は、成功の経験より大事です。思い切ってアメリカで活躍したいと思えばそうすることです。私も英語が嫌で車の運転も嫌だった。しかし、ある時自分の殻を破ったのです。私の履歴書は一見順調なようですが、大学受験は、一番行きたい学校ではなかった。でも、このことが大事で、行けなかったことでやる気が起きるのです。ここには、800名の人がいるがそれぞれ違ったことをやりたいはずです。一番魅力を感じること、青春時代は一番努力してみたいことに打ち込むことが大事です。そして、失敗や成功を繰り返す中で、こうあったらいいなと漠然と思っている自分を目指してください。10年後20年後に、こうあったらいいなと思っていた自分を発見すると思います。

                                                                             (平成23年1月27日に本校で行われた第7回DS講演会の講演内容より一部抜粋) 

「己を信じて、前を向こう!」

サンパシフィックカレッジ 代表 笠原孝仁(オーストラリア・ケアンズ在住)  

 オーストラリアで語学学校を開校して早10年が経ちました。各国出身の多くの留学生たちが英会話能力を身に付けるために私たちの学校を訪れます。学内には、英語教師たちとは別に、数名のカウンセラーが常勤しています。留学生へ英会話能力を伸ばすための勉強方法のアドバイスをしたり、彼らの滞在先でのトラブル問題などの相談に乗り、解決のお手伝いをしたりすることがカウンセラーの仕事です。当然、各国出身のカウンセラーが勤務しています。以下、実際にあった話です。

  カウンセラー室へ相談に訪れたのは日本からの留学生です。

     留学生: 「ホストマザーが、私のシャツの壊れていたボタンをみて、新しいボタ ンを付けてくれました。

          でも、そのときチップを要求されました。ああ、 お金目当てだ、と思いました。優しいと思ってい

          たホストマザーに裏切 られた気持ちです。もう、日本に帰りたい。」

    日本人カウンセラーが彼女から話を聞いた後、ホストファミリーへ連絡をすると、ホストマザーはおっしゃいました。

    マザー: 「彼女のシャツの欠けていたボタンを彼女のために直してあげたの。

         す ると、シャツを受け取ったあと、彼女は悲しそうな顔をして自分の部屋 に閉じこもってしまった

         の。どうしたのかしら。」

         "A button of your shirt was chipped, so I fixed it for you"

         「あなたの欠けていたシャツのボタン、(あなたのために)直しておいてあげたわよ。」

         *欠けている=chipped、*チップ・お金=tip (英語ではティプに近い発音)

 欠けているという意味のchippedを、お金のtips と誤解した背景には、双方「チップ」という音が似ていたことだけでなく、ホストマザーがfor youと言うときに自分の手のひらを生徒に向ける「あなたへ・どうぞ」という意味のジェスチャーをしており、これが「(チップを)ください」という要求ジェスチャーに見えたことも手伝っていました。英語力がまだ低い時点ではこのような誤解は簡単に発生します。

  ホストマザーからの話を聞き、何が起こったかを理解したカウンセラーはこの留学生に説明をしてあげました。誤解の解けた留学生は晴れ晴れとした笑顔で教室へ戻っていきました。優秀なカウンセラーさんがいてよかったね、一件落着。一件落着。さぁ、果たしてそうでしょうか。

  お伝えしたいことがあります。この相談をしてきた留学生はこのままでは留学において高い成果を得ることはないということ。そして相談を受けたカウンセラーは間違った対応をとったということです。

 韓国や、台湾、ヨーロッパ諸国の多くの留学生たちも、ファミリーとの間で上記のような誤解を生じることはあります。しかし対応において彼らの多くは「チップ??嫌だよ、払わないよ」と、たどたどしくても自分自身でその意思をホストマザーにその場で伝え、そこから始まる会話で事態は解決していきます。笑い話となるかもしれません。これらの留学生は、この経験を更に前向きな自信に置き換えます。間違えたことを糧にして進むのです。恥ずかしいけど、楽しい最高の思い出として。間違えて当たり前です。外国語ですから。この10年で私たちの現場での対応も、このような相談が来ると、「いくら払えって言われたの?」と訊いてみたり、「払いたくなかったら、相手にそう伝えてごらんなさい」とアドバイスをした上で、一度留学生を送り返したりするなどの留学生本人に対処させるようなカウンセリングに変化、そして進化してきました。

 奥ゆかしいこと、ひかえめなこと、本音と建前をもっていること、これらは時と場合によっては日本文化の良い点なのかもしれません。しかし、国際社会へ飛び出す手段としての英語を身につけていくためには「自分の意思をしっかりと伝える力」を得ることのほうがはるかに大切です。技術よりも気持ちです。前向きであること、自分を信じていること、人に頼らないこと、こんな資質を持った留学生たちが先頭を切って英語を自分の言葉にしていきます。これらの資質を持つこと、それは難しいことではありません。上記のような資質を持つか待たないかは、正解や成績評価があるものではなく、そうするか、しないかの違いだけでしかないものだからです。国内外を問わず、今後の社会に生きる上でも必要な姿勢だと思います。

 みなさん、己を信じて、前を向きましょう。

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「世界の未来を担う君たちへ」

(株)DLC 日中ビジネスコンサルティング 代表取締役社長 青木 麗子 氏 

(株)DLC 日中ビジネスコンサルティング
代表取締役社長 青木 麗子 氏

この度、松木校長先生からご縁をいただき、この文面を通して世界の未来を担う君達へ思いを伝える素晴らしいチャンスに恵まれたことにまずは感謝したいと思います。そして、今私が認めようとしているこの拙い文章が君達の目に心に触れられる、そう考えると身も心も引き締まる思いでいっぱいです。

 鑑真和上、孫文先生、そしてマザーテレサ。私が最も尊敬する先人達です。生きてこられた時代背景、成し遂げられてきた偉業にそれぞれ違いはあるけれど、無私、ミッション、信念、強靱なる精神力の持ち主である点は、みんな共通しています。人は、本来それぞれの使命をもってこの世に生まれてきていると私は考えています。もしかしたら、それが俗に言う「夢」や「目標」というものなのかもしれません。ミッションや夢を見つけることが難しいと思う人も多いと思いますが、私は決してそうではないと思っています。 

  ミッションは、それぞれが生きてきた「時間」の中にあると私は信じています。私は幼少の頃、激動の中国で育ち、幼いながらも様々な過酷な体験をしました。中学二年生の時に、日本に戻ってきた時には、もう二度と中国に足を踏み入れることはないと頑なに思っていた私でしたが、高校生となり、自分たち日本人が何故辛い思いをさせられなければならなかったのかを考えられるようになった時に、そう思っていた自分の愚かさに気づき、将来は日本と中国の架け橋になることを決意したのでした。世界が平和で、あの不幸な歴史を繰り返さないためにも、日中両国の人々の心の壁を取り除き、互いを尊重し、信頼し合える関係を築くために貢献したいと、心の底からそう思ったのです。そして、二十数年間にわたって日中交流の架け橋として、まっすぐに突き進んできましたが、私にとって、鑑真和上は目指すべき大きな目標であり、敬愛してやまぬ存在でした。日中関係がこじれ、両国民の信頼関係が崩れていくことを目の当たりにした時に、私はいつも心が引き裂かれそうなり、日中両国の架け橋たることへの信念が挫けそうになったときには、いつも思い出すのは鑑真和上の存在でした。 

 今、世界経済のバランスが崩れ、世の中が混沌とし、人々の生きる価値観が問われる難しい時代に君達は生きています。この難しい時代を切り開き、新しい時代を創造するためにも、君達が世界に目を向けて、しっかりと学び、多くの体験を積み上げつつ、自分のミッションはなんなのかについて、しっかりと考え、見つけ出されることを心から願っています。最後になりましたが、私の大好きな孫文先生の言葉「天下為公」を贈ります。

 

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「前例に囚われないチャレンジャーを目指そう!」

九州エネルギー館 館長 瓜生 芳郎 氏 

 「あんた変っとぉね!」、人にこう言われると私はニンマリしてしまいます。私は、人とは違う視点で物事を見ることを常に意識しています。私にとって「変っている」の言葉は、最大の誉め言葉なのです。今、世の中では様々なことが大きく変化しています。世界では、地球温暖化防止に向けた様々な取り組みや、欧米に端を発した世界同時不況以降の経済活動の変化、国内においては、人口減少・少子高齢化社会の到来と地方の疲弊など。こうした様々な環境変化が、人々の価値観や社会の仕組みに大きな変化をもたらしています。皆さんは、まだ自分には、あまり関係のないことと捉えているかもしれません。しかし、グローバル化が進む現在においては、海外の一部の地域で発生した事象が瞬く間に世界中に影響を与えることになるのです。それは、皆さんを含めた市民生活への変化にも繋がる時代なのです。今、皆さんは、世界や日本で何が起こっているのかを学ぶとともに、様々な変化を感じ取る感性を養うことが必要です。変化に敏感である一方で、自らの強みを知り、それにこだわることも重要です。「ものづくり王国日本」、最近ではちょっと元気がありませんね。しかし、ここで日本の職人芸的なものづくりへのこだわりを忘れてはいけません。世界がまねのできないものづくりは、未来を見据えた研究開発と、それを製品とするための高い技術力(わざ)の継承が不可欠です。これこそが「ものづくり王国日本」の強みだと思います。皆さんも同様に自分自身の強みを認識して、それを伸ばすことを心がけることが大切です。そうすることで将来の目標も明らかになってくると思います。そして、夢の実現に向けた、常に新しい具体的な計画を持ち続けることが大切です。学問においても様々な回答方法があるように、世の中の課題解決策も様々です。まず、皆さんは、前例や常識に囚われないフレキシブルな発想をする訓練を積んでください。そして、人とは違う発想ができる個性的な「あんた変っとぉね!」と言われる人を目指していただきたい。将来、あなたが世界に通用するビジネスマンやエンジニアとして、様々なことにチャレンジすることを期待しています。そして、常に個性溢れる前向きな人生となることを願うばかりです。

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「将来海外へ出ようと思う高校生のみなさんへ」

American  Information Service  代表 籾井和博 氏 

籾井和博 氏 

(ワシントンD.C在住) 

   私は渡米して23年になります。アメリカで生活している日本人として、アメリカを含めた海外へ出ようとする学生の皆さんへ海外で必要な能力や考え方、またこれからの日本人にとって必要とおもわれる資質を体験から得た事を基に伝えたいと思います。英語力(語学力)は海外を考えるとき最初に出てくる能力だと思います。その語学力は高ければ高いほどその人が有利になるのは間違いありませんが、しかし語学力の高さだけで長く外国やそこの人と関わって行く事はできません。何かを伝えようとする時、語学力が占めるのは三分の一だと思います。残る三分の二のうち、三分の一が知識(一般的、専門的なもの)とあとの三分の一が人柄です。知識があっても語学力が劣れば相手に通じないし、語学力があっても知識が少なければ伝える内容は軽薄なものになってしまいます。この二つが高く豊富でも人柄、つまり責任感や道徳観、優しさや包容力などを含めた人柄が劣れば、知識がただの物知りになり、語学力が感情を持たないものになります。海外は日本と異なる文化や習慣の国。そんな中で人と通じ合って行くには語学力、知識、人柄を常に併せ持っていなければ、間違いなく社会から排除されてしまうし、海外で通じる人にはなれません。

語学力と知識、人柄を文字で書けば難しく感じるかもしれませんが、語学力と知識は毎日の勉強で、人柄は毎日周りで接している人との間で学べるものです。日々を大切に精一杯過ごせば海外でも通じる人になれます。特に日本についての知識は必要です。基礎、一般教養を学んだ国が日本なので日本の事が分からなければ海外を勉強しても理解はできません。私たちはなにより日本人ですから。海外から見れば日本は閉鎖的だと言われます。その閉鎖性から来る考え方は海外では優柔不断に写るようです。日本では周りを気にして自分の意思を伝えず、その場の雰囲気に合わせようとします。結果、大勢の意見に従い、自分の考えを下げてしまいます。それが海外でも出てしまうようで、意見を聞かれても明確に答えを返せないことが多いようです。自分の意思をしっかり持つことは、外国人になってしまう海外では特に求められることです。

 これは別な意味の「考え方」についての1例です。飛行機が天候で大幅に遅れてしまいました。深夜になり出発できる事が決まりました。次の2つはその時の反応です。

 1.大幅に遅れた為予定が狂ってしまい、航空会社に苦情もしくは損失を訴える。

 2.予定していた事ができなくなったけど、同日中に目的地へ行く事ができ感謝する。

1は日本人の反応、2はアメリカ人の反応です。予定は自分の目的であって、その為にどの手段を選ぶかはその人の選択することです。その選択に問題が生じた場合、最初に自分の間違いを考えるのか、選択した相手の間違いを考えるのか、これは日本とアメリカの大きな違いです。特に組織において、日本では目標を立て、それに向かって努力するが、途中で状況が変わり、目標を変更する必要性に気づいても目標を変えようとはしませんし、公表でもしてしまえばそれを悪と捉えてしまいがちです。しかし、アメリカでは状況変化で目標設定の変更が必要であればすぐにでも行いますし、目標自体を中止することもあります。日本では目標=結果と捉えられ、アメリカでは目標は方向性を意味し、結果は過程が生み出すものと捉えられています。100%を前提に一歩目の行動をとるか、0%から方向性を前提に可能な一歩を取るかは考え方の大きく違うところです。

これからの日本人にとって必要と思われる資質について。

 知力、体力、精神力。これはアメリカのある有名大学で聞いたエリートの条件と言われているものです。状況に応じて考え、それを基に行動し、どんな状況に変化しても冷静でいられる資質、これらを兼ね備えることは大変なことです。しかし、それらを兼ね備えた人が海外には多くいます。実際に接してみると素晴らしい人柄を感じ、思わず包み込まれるような大きさを感じます。勉強は必要なことです。それを生かすには行動力が必要になります。目標を達成するには大勢の人と接し、多くの事を考えていかなければなりません。社会が必要としているものは誰も教えてくれません。社会が必要としているものを自分で探し、見つけた中で自分のできる事を考え、そして、信念を持って行ってください。それはアメリカだけでなく、どの国でも通じることです。

 世界の情報はインターネットで簡単に取ることができ、またどこの国の人とも簡単に話す事が可能になりました。また資本は国境を越え、人の移動も増加しています。世界情勢の変化は加速し、その勢いは止まるところをしりません。しかし、このような状況を作り出しているのは間違いなく人です。自分をしっかり見つめ、今できる事をひとつずつ行って明日へ繋げてください。そして、目標へ少しでも近づけるようがんばってください。

 

                               

「現状を変えよう!」

亀田徹氏からのメッセージ  株式会社PHP総合研究所 教育マネジメント研究センター長

亀田 徹 (かめだ・とおる)

専門分野【学校教育・教育行政】

   マネジメント(経営)の分野で「PDCA」という手法があります。計画を立て(Plan)、実行し(Do)、評価に基づいて(Check)、改善を行う(Act)。これにより、製品やサービスの質を高めるのです。たとえば、あるリゾート施設では、朝食のバイキング会場でお客様を待たせないため、出入り口を増やし、食事台周辺のスペースを広くとることにしました(=Plan)。実際に実行してみたところ(=Do)、待ち時間が半分以下になったそうです(=Check)。待ち時間短縮のためのさらなる改善を重ねる(=Act)ことにより、お客様の満足度を高めることができます。PDCAは、“最初から正解に到達することはない”という考えに基づいています。すなわち、正解がわからなくても仮説に基づき実行し、試行錯誤をくり返すことでより効果的な方法を探ります。“まず変えてみよう”との発想です。

   私は、数年前まで文部科学省で勤務していました。当時感じたのは、これまでの制度を変えることの難しさです。中高一貫制度の創設、大学入学制度や大学院制度の改正といった改革をしようとすると、反対する声が必ずあがります。たとえば、中高一貫制度の創設では、中学入試の激化が心配されました。文部科学省は、中学入試が激化しないよう配慮することを学校関係者や国会に対してくり返し説明し、改正作業を進めました。これまでの仕組みを変えるには苦労が伴います。反対する人を説得しなければなりません。仕組みを変えてもし弊害が生じたら批判もされます。そのため、往々にして改革が先送りされることがあります。これまでどおりの方が無難だからです。

     

 昨年の衆議院選挙で自民党が敗北し、民主党連立政権が誕生したことはご存じでしょう。これまでの政治の仕組みを変えてほしいとの有権者の意思が政権交代を実現させました。しかしながら、国民が思っていたほどには政治の仕組みはまだ変わっていないとの印象です。この1年の様子をみていると、いくつかの課題は先送りになっています。それが、今年の参議院選挙で与党が過半数を下回ったことのひとつの要因になったと考えます。

   社会経済がスピーディに変化しているなか、その動きに合わせて政治や行政の仕組みを変えていくことが求められています。先送りせずに、まず現状の仕組みを変えてみる。うまくいかなければ、さらに知恵を絞って変えてみる。これからは政治や行政にもPDCAを応用する必要があると考えます。変化をくり返していけば、よりよい仕組みに近づけることができるはずです。

    PDCAは日常生活にも生かすことができます。私の趣味は空手です。背の高い相手と対戦するとき、相手の懐が深くてなかなか突きが届きません。「相手の蹴りに合わせて自分が突けばいいかもしれない」と考え(=Plan)、試してみました(=Do)。しかし、攻撃だけに意識が集中すると相手の蹴りを受けてしまうことがわかったので(=Check)、しっかり防御してから突くようにしています(=Act)。

   みなさんも、部活や学習の現状を変えるためにPDCAを生かしてはどうでしょうか。たとえば“英単語をいまより短時間で覚えるにはどうするか”、“どうすればゲームを切り上げて勉強にとりかかることができるか”といった方法を自分なりに考え、試してみるのです。うまくいけばさらに工夫をし、うまくいかなくてもがっかりせずに「最初からうまくいくはずがない」と思ってまた新たな方法を試します。

   現状維持よりは、まず変えてみる。大事なことは、「変えよう!」と決めてとりかかることです。

(写真はPHP総合研究所ホームページより引用)

「大学で学ぶこと」

菊池裕嗣教授からのメッセージ  九州大学 先導物質化学研究所 教授

    大学で学ぶ形態は「講義」と「研究」の二種類に大別されます。「講義」は既に確立した学問を教授の講説を通して学ぶもので、学生から見て「受動的」な勉学の形態と言えます。高校の授業とさほど変わりないものと考えて結構です。ただし、多くの大学の先生は高校の先生ほど教え方が洗練されておらず、大抵の新入生はまず大学の講義のわかりにくさに戸惑います。実は私もその一人でした。その私が大学の先生になって気がついたことは、講義の内容と受講生の学力のギャップ、さらに先生が期待する学生の自立した学習姿勢と実際の学生の依頼心の強い学習姿勢とのギャップです。大学の先生はその隔たりの大きさを相当に甘く見ているのです。この問題は最近かなり意識され修正されてきているようですが、「講義」がいくら改善されても「受動的」な勉学には限界があり、学生が「講義」を受けただけで飛躍的に成長することはまず期待できないと私は思います。一方、「研究」は各教授が主宰する研究室に入り、未知の課題に取り組むことにより「能動的」に学ぶことです。研究室とは、その教授の学問の追究の場であると同時に、その教授のもとに弟子入りした学生が同門の兄弟子らとともに苦楽を共にして切磋琢磨する修行の場でもあるのです。ここで、学生は、 ・最先端の研究テーマに取り組む ・最新情報を収集し分析する ・教授や同門生らとディスカッションする ・学会等で研究成果を発表する ・世界と競争する ことを経験します。研究は、世界中でまだ誰も答えを知らない問題を解くことに等しく、それまで答えの分かっていることを学び、答えの用意された問題を解くことに傾注してき学生にとっては初めての経験となります。当然、その問題は容易には解けません。問題を解く手段として、高度な専門知識などが必要であることを知り、自分でその知識を獲得しようとします。これが「能動的」な勉学です。実際にその手段によって問題が解決できたとき初めてその知識は単なる知識ではなく使える知恵になり、この積み重ねによって学生は飛躍的に成長します。さらに学生自身の創意工夫が成果に結びつくことによって創造力が身につきます。学会や論文発表を通して視野が広がります。そして、新たな研究テーマを自ら提案できるようになれば、一人前の研究者として免許皆伝と言えます。これは学生当人にとってみれば正に脱皮といえるほどの変貌で、生きた大学教育の真の価値をそこに見いだすことができます。 一般に大学の4年間で研究室に所属するのは4年生の1年だけですから、十分な研究能力を身につけるには短すぎます。そこで、さらに研究室での修行を続けたい学生は大学院に進学します。理系の場合、大多数が大学院に進学する傾向にあり、例えば化学系の場合、8割以上が大学院に進学しています。理系でこれほどの高い進学率になっている理由は、近年、科学技術がますます高度化し、大学の4年間だけでは到底習得できないことと、企業の求人が良質の「研究」を経験した学生に集中することにあります。このように日本の生命線といわれる科学技術の発展には、大学や大学院の「研究室」が重要な役割を果たしています。この読者の中からも、「研究室」への入門を経て創造的な研究者が生まれることを願っています。

高校生へのメッセージ

石倉洋子教授からのメッセージ  一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授

    21世紀を生きる皆さんには、「広い世界にはばたく」「ユニークさを求める」、「多様な可能性をさぐる」ことを目指してほしいと思います。なぜ広い世界であって、日本だけではないのでしょうか。世界は今や統合化され、遠い国で起こったことが瞬時に日本にも伝わり、日本だけが世界の動きから隔離されていることがないからです。日本では少子高齢化や成熟経済などあまり元気が出そうにない話ばかりが聞こえてきますが、アジアは世界の中でも最も大きな成長が期待されている地域です。その気にさえなれば、広い世界は皆さんのものになるのです。ユニークさとは何でしょうか。誰にでも得意なこと、ユニークさがあります。この仕事や活動をするのはあの人しかいないといわれるような自分の「武器」「セールスポイント」を持ってください。学生である間に自分の得意技を見つけ、世界に通じるプロフェッショナルになる一歩を始めてください。なぜ多様な可能性なのでしょうか。将来の仕事やライフスタイルには限りない選択の可能性があります。企業だけでなく、政府や国際組織につとめることもできます。自分でビジネスやNPOを起こすことも、芸術、スポーツなどの世界で活躍することも、可能性は無限です。自分で将来はこれ!と決めてしまわず、興味のあることをどんどん試してみてください。 それでは、世界でやっていくためには何が必要でしょうか。1)ユニークさの源になる専門分野、2)自分の意見を世界に対して発信できる力、そして3)意見が違う人とも議論を重ねて、より良い解決案を見つけ、それを実践する力、の3つだと私は思います。 それでは明日から何をしたら良いでしょうか? まず行動です。今までやってきたことを振り返って、好きなこと、うまくできたことを思い出し、時間を忘れるほど熱中できることを見つけてください。それが「武器」「専門分野」の源になります。どんな時でも何についても自分の意見を持ってください。何かコラムを読んだら、その意見に賛成か反対か、その理由を考えてみるのです。またニュースを聞く中、私がその当事者だったらどうするだろうか、と考えてください。常に頭を働かせ、「なぜこうなのだろう」「私だったらどうするだろう」と考える癖をつけるのです。 未来をつくる皆さんには、子どものような心、ハッカーのような大胆さ、宇宙飛行士のような視野を持ってほしいと思います。皆さんも小さい時、何にでも好奇心を持ち、「なぜ」「なぜ」と質問を繰り返していたこと、「何でもできる」と大きな夢を持っていたことがあるでしょう。こうした子どものような好奇心、非現実的ともいえる夢を持ち続けてください。「ハッカー」というと、コンピューターを襲って秩序を乱す人を想像するかもしれませんが、ここでいうハッカーとは、あるものを見たら、これで何ができるか?を常に考えている人を指します。多くの人は何か新しいものをみると、「これは何をするものか」と聞き、その機能で満足してしまいます。しかしハッカーは、「これで何をやらせられるか」を常に追求するのです。世界が直面するエネルギー、資源、水、食糧、環境など、こうした大胆な考え方が必要なのです。宇宙飛行士は、地球を離れて地球全体をみることができます。今住んでいる所だけでなく、グローバルを超えた宇宙から物事を見て、考えることができるのです。狭い範囲に閉じ込められるのではなく、世界をそして自然を見渡す、こうした広い視野が今必要とされています。子ども、ハッカー、宇宙飛行士の3つの役をできるのは、これから21世紀を生きる皆さんしかいません。Good Luck! Enjoy the Journey.

コミュニケーション―世界村のリーダーになるために

守屋静代教授からのメッセージ   ICU 国際基督教大学 教授

    「世界がもし100人の村だったら」という絵本を見たことがありますか?世界全体をひとつの村(グローバル・ヴィレッジ)にたとえ、人種、宗教、政治、経済、教育、医療等の状況を数字で表し、9.11の同時多発テロ直後からインターネットによりチェーンメールのように世界中に広がったメッセージです。世界がもし100人の村だったら、「61人がアジア人です。13人がアフリカ人、13人が南北アメリカ人、12人がヨーロッパ人、あとは南太平洋地域の人です。」「村人のうち、1人が大学の教育を受け、2人がコンピューターをもっています。けれど、14人は文字が読めません。」というふうに語られる数字は、世界がいかに不公平で、不均等であるかを如実に語ります。異なる立場を認め互いの利益を地球規模で考えなければ、人類の未来も地球の将来もなくなってしまうのだ、という警告がこめられています。 21世紀、世界村のリーダーとなる人には、ますますコミュニケーションの力が求められるようになるでしょう。言葉を習得するということは現象の切り取り方、文化とも呼ばれる特定の考え方を学ぶということです。例えば昼間の太陽はどこで見ても同じ色のはずですが、日本の子どもは赤で塗り、アメリカの子どもは黄色を使います。日本人が区別する米・ご飯、湯・水は英語では “rice,” “water”と1語しかありません。地球がますます小さくなるこの時代、人や物を動かす世界村のリーダーは、複雑で高尚なことを言葉にすることができ、異なる価値体系を尊重する柔軟性と、母語と外国語の習得を通して人間の行動や習性に深い洞察力を持つ人であるべきでしょう。 小学校でも英語を学ぶ時代です。全員が英語を学ぶ前提なら、聞く話すことに重きが置かれるでしょう。国際語としての英語の勢いは当分続くと思われますから、日本人も臆せず英語で会話をすることができるのは有益です。英語は今や最大公約数の言葉となり、世界村のたくさんの人々に一度に伝えることができる便利な道具です。しかし、これからのリーダーとなる人は、世界村で何が起こっているか、どうしてそれが起こるのかを、印象や思い込みでなく、多面的に解釈し、プレゼンテーションを含むスピーキングとライティングによって、つまり聞く話すだけでなく読み書きの力を発揮して意見やアイディアを「発信」できなくてはなりません。インターネットやメディアの発達により今や話し言葉並みのスピードと内容で、読み、書き、発信しなくてはならない時代です。若い時から、言葉によるコミュニケーションの難しさと成功した時の達成感の両方を知っている人こそ、優位な方が自分の都合を押しつけることの多かった20世紀の世界のあり方を超えた真の平和を世界村で実現することができるでしょう。「いろいろな人がいるこの村ではあなたとは違う人を理解すること、相手をあるがままに受け入れること、そしてなにより、そういうことを知ることがとても大切です。」



 


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